先輩医学生からのメッセージ

令和4年度卒業生、学年代表 山崎 隆一郎

初めまして。私は令和4年度に大阪大学医学部医学科を卒業し、4月からは市立池田病院で初期研修をさせていただきます。この度、医学科教育センターの渡部先生より学生生活を振り返りメッセージを執筆する機会をいただきました。拙い文章ではありますが、後輩や受験生の皆さまの参考に少しでもなればと思います。


学生生活(1回生)

入学して最初の1年間は豊中キャンパスでの生活がメインになり、語学や数学などの一般教養の講義が中心になります。他学部の学生と共同で講義を受けるのは事実上最後なので、この1年間でしっかりと大学生らしい(?)キャンパスライフを満喫しましょう。また、医学と直接関係ない講義を受けられるのもこの時期の魅力です。私は、関西圏の大企業の経営者が持ち回りでお話をしてくださる「関西は今」という講義、そして視覚的なコンテンツ制作言語のProcessingの実習をする「計算機シミュレーション入門」という講義を受講していましたが、振り返ってみるとどちらもその後の医学生としての活動の基礎になっていると感じます。

学生生活(2回生から4回生)

2回生からは吹田キャンパスでの専門の講義が本格的に始まり、医学生になったなと実感する日々を過ごすことになります。特に2回生の後半にある解剖実習は、ご献体にメスを入れ、人体の構造と機能を一から勉強させていただくというもので、これを機に学年の雰囲気が一気に引き締まったように感じます。2回生はこのような解剖学や生理学、3回生は免疫学や病理学といった発展的な基礎医学を勉強し、4回生の秋までに一通り臨床医学を学び終えますが、この3年間はとにかく試験が多いです。1週間に2~3個の試験があることもあり文字通り頭がパンクしそうになりますが、何とか乗り越えましょう。

ちなみに、基礎医学の内容は難解に思えますがけっこう臨床医学でリバイバルしてくるので、仮に低学年で完全に咀嚼できなかったとしても、何年か経って突然理解できるようになったりします。医学の勉強は思った以上に息の長い営みなので、諦めないことが重要です。

学年代表

私は2年次の後半から約4年半にわたって学年代表を務めさせていただきました。学年代表は講義や実習において先生方と学生との調整役を担ったり、大学側からの連絡を学生に伝えたりといったことが主な役割です。月に一度、教育センターの先生方が全学年の学年代表が集まる会議を開いてくださり、大小問わず学年の問題事を整理・共有する機会を与えてくださったのがとても助かりました。

学年代表の仕事は責任も大きく、実習の組み合わせがうまく決まらなかった時などは文字通り胃に穴が空きそうになったこともありましたが(比喩ですのでご安心ください)、仕事を終えた時の達成感は格別ですし、何より様々な作業を通じて得た人との繋がりは何物にも代えがたいです。興味のある人は是非トライしてみてください。



部活動

入学式と同時に部活の勧誘が始まり、ほとんどの学生が医学部の運動部に所属します(今の新入生がどうかはわかりませんが)。私は高校の時に体育のフリースローのテストで37回連続外すという記録を持つほどの運動音痴でしたので、部活には入らないという決断をしました。その代わり、当時5回生の先輩が立ち上げられたプログラミングサークル「Python会」(Pythonとはプログラミング言語の名前です)に加入し、ゆるく活動していました。

しかし人生とは不思議なもので、4年生の時にPython会が「情報医科学研究会」と名前を変えて、大阪大学医学部に公認されることになったのです!その時には一応幹部という役職をいただいていましたので、どこの部活にも所属していない私が一夜にして部活の幹部になってしまったのでした。ちょうどコロナ禍で、在宅で活動できる部活が求められていたこともあり、情報医科学研究会はその年に最も新入生を集めた部活となりました。また、ここでの活動は、後述するMDプログラムでの研究活動にも大きく役に立つことになりました。


MD研究者育成プログラム

私はもともと研究者に憧れて医学部に入学したので(現在は臨床にも興味を持っています)、放課後や長期休みに研究室に通うというMD研究者育成プログラムの制度はうってつけでした。私は6年間、神経遺伝子学教室(河原教授)という研究室にお世話になっていました。初期の頃は培養細胞を用いた生化学的実験を教えていただき、3年生の基礎配属からはそれと同時進行で、single cell解析と呼ばれるドライ(ゲノムなどのデータをパソコンを用いて解析する手法)の研究にも従事していました。ドライの解析は、先述した情報医科学研究会との活動とも親和性が高く、特にコロナによるオンライン講義の期間は半ば趣味のような感じでのめり込んでいました。また、6年次の研究室配属では、所属する研究室を離れて遺伝統計学という教室でより高度なsingle cell解析を練習したりと、多様な活動を認めていただき、たいへん感謝しております。



臨床実習

さて、医学部正規のカリキュラムの話に戻りますが、4年生の1月からは座学の講義はなくなり、阪大病院や関連病院での臨床実習が始まります。これまで本の中の存在でしかなかった医学知識が、実際の患者さんとの対話によって生きたものになる非常に貴重な体験だと思います。ただ見学をしているだけではなく、患者さんの診察に行かせていただいたり、カンファレンスで発表したり、手術の助手として簡単な手技をしたりと、医療チームの一員としての意識もぐっと高まると思います。また、阪神間の一円にある関連病院をローテートすることで大阪大学医学部の人の繋がりを感じたり、今まであまり話さなかった同級生と仲良くなったりと、学問以外の得るものもとても多かったです。

余談ですが、臨床実習で自己紹介をするとだいたい「志望科(現時点で考えている科)は?」とか「どこの病院を考えてるの?」といった質問をされます。最初の方はあまりピンと来ていませんでしたが、今から考えれば、近い将来1人の医師として活動するのだという事実を再認識させてくださっていたのだろうなと思います。



マッチング

マッチングとは医学生の就職活動で、6回生の7~8月に各病院の採用試験や面接が行われます(結果発表は10月)。早い人であれば5回生の夏ごろから病院見学に行きますし、6回生の春ごろには志望の病院をおぼろげに決めているので、事実上5~6回生の1年間くらいはマッチングが最大の関心事になります。私は阪大病院を含めて5つの病院に願書を出しましたが、手書きで全ての履歴書を書いたり、病院ごとに異なる試験・面接の対策をしたりと、直前期はなかなか大変でした。

ここからは私個人の意見ですが最近の医学生は(過去の私も含めて)マッチングに囚われすぎではないかと思います。「第一志望」などと言いますが、まだ医師として一度も働いていない段階で、病院に対する価値基準が定まっているわけでもありません。「第一志望」に受かることよりも、自分に縁のあった病院で2年間真剣に勤務する方がよほど重要ではないでしょうか?また、「マッチングは情報戦」とよく言われますが、「情報」だと思っていたものが実は「個人の感想」にすぎなかったということもよくあるので、真偽不明の情報に振り回されるくらいなら、落ち着いて採用試験の勉強をしましょう。

医師国家試験

2023年の医師国家試験の合格率は91.6%と決して低くはなく「普通に勉強していれば受かる試験」だと言われます。しかし、なにせ範囲が膨大なので、思った以上に勉強は楽ではないと思います。私からのアドバイスとしては、マッチングの際の採用試験でメジャー科(内科・外科、場合によっては産婦人科・小児科)がだいたい課されるので、メジャー科の国家試験の過去問はマッチングまでに一通り解いておくことをお勧めします。そうすると、後々の勉強がだいぶ楽になると思います。

また、学年で国家試験の勉強会グループを作ることもお勧めです。医師国家試験の範囲は幅広いので、自分だけの視点では抜け落ちているポイントがどうしても出てくるからです。私のグループは直前期、Slack(チャットスペースのようなツール)の「情報共有」というチャンネルにほぼ毎日のように医学知識や語呂合わせを共有し、それについて議論していました。塵も積もれば山となるという格言は本当で、国家試験の前日には「情報共有チャンネル」の過去の投稿・コメントを見るだけで全範囲の復習になりました(後で聞くと他のメンバーも同じことをしていたそうです)。
膨大な知識量には集合知で立ち向かいましょう。

最後に

大阪大学医学部での6年間、数え切れないほどたくさんの人にお世話になり、数え切れないほどたくさんの経験をさせていただきました。この場を借りて、お世話になった皆さんに心から感謝申し上げます。まずは2年間の研修をしっかりと終わらせて一人前の医師になること、そして大阪大学で得た「人との繋がり」を絶やさず、自分も新たな人を育てていけるような懐の深い人間になることを目標に、これからも頑張っていきたいと思います。




令和5年3月28日
山崎 隆一郎

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